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2024年4月14日日曜日

ソフト/クワイエット('22)   レッドラインを越えていく女たち  ベス・デ・アラウージョ

 



作り手の覚悟・胆力が映し出す、全編ワンカットの圧巻の90分間。 

ベス・デ・アラウージョ監督


以下、梗概。

 

 

1  「毎日妻に軽蔑されたい?…男なら勇気を出して礼儀を教えてやるの」

 

 

 

幼稚園教師のエミリーは、トイレに入って妊娠テストをする。

 

「お願い。今度こそ…」

 

しかし、またも不妊だったと分かって涙するエミリーは、外で母親が迎えに来るのを待っていた元生徒のブライアンに声をかけ、初めて書いたという絵本の最初の読者になってもらう。 

エミリーとブライアン


その時、ブライアンが絵本を音読する声を掻(か)き消す、有色人種の清掃員が清掃具を転がす音に不快感を持ったエミリーはブライアンに指示する。 

清掃員(左)


「彼女に伝えてきて。“生徒が帰るまでモップ掛けをするな”と。足を滑らせて大ケガをしたら大変よ。男の子なら、勇気を出さなきゃ。自分を守るために闘うの…さあ、行ってきて」

 

そこに迎えに来たブライアンの母親に事情を説明する。

 

「迷惑な清掃員のせいで、滑ってケガするところだった。ブライアンは優しい子よ。困ってる子がいたら、すぐに手を貸すわ。だからこそ、強さを教えたいの。自分を守るために闘えと。安全に関わることだもの」 

エミリー(左)とブライアンの母


事実ではないエピソードを虚言し、自分の信条を植え付けようとするエミリー。 


ブライアンが戻り、母親に「助かったわ。いい母親になれる」とお礼を言われ、一瞬、表情が固まったエミリーは、次に自分で焼いたパイを持って林の奥の教会へ向かう。 


途中で声をかけた初対面のレスリーと共に教会の2階へ上がると、既に参加者たちが集まっていた。 

レスリー(左)



エミリーがパイのふたを開けると鍵十字が刻まれており、「クソヤバい」、「教会の中よ」などの声が上がるが、エミリーは「単なる、おふざけよ。あんまり真剣に取らないで」と言って皆で笑い合う。 


エミリーのスピーチが始まった。

 

「会合を開けて本当に嬉しいわ。今日の目的は、お互いをよく知ることよ。検討すべき議題があるわけじゃない。私たちは手を取り合って、多文化主義と闘うの。これまで私は洗脳されてた。白人であることを恥じ、罪の意識さえ感じてたの。西欧諸国の繁栄は、私たちの夫や父や兄弟のおかげよ。なのに、その恩恵を他民族ばかりが享受してる」


「みんな洗脳されてた」

「私は町の学校で教員として働いてるの。私の望みは母親になること。でも、子供を授かるのに少しだけ苦労してる。きっと大事な使命があるのね。このグループよ」

「ステキな名称ね。次の世代に引き継げる」

 

ホワイトボードには、“アーリア人団結を目指す娘たち”と書かれている。

 

ここから参加者の自己紹介が始まった。

 

トップバッターはマージョリー。

 

「怒らせたくないけど、私は場違いかも…職場のことに悩んでるの…実はこの町で仕事をしてて、先に言っとくけど、これは個人の悪口じゃない。私は毎日1時間かけてバスで職場に通い、2年間、がむしゃらに働いてきたの。管理職になるためにね。でも残念なことに、私の少しあとに雇われたコロンビア人の女性が管理職に昇進したの」

マージョリー(中央)


「…あなたが感じた気持ちは間違ってない」とエミリー。

「とにかく私は闘おうと思って、上司に理由を聞いたの…上司の答えは、“彼女の方が指導力がある”。それを聞いて、頭に血がのぼってキレちゃった。“逆差別よ”。なのに同僚たちは誰も味方してくれない。私が変なの?」

「違うわ」

「意味不明よね。“多様性”とか“受容”とか。暗号みたいな言葉にはウンザリ。役所や感謝の書類にも書かれてる…もう途方に暮れてるの。それが参加の理由」 

マージョリー


マージョリーの発言を受けて、エミリーが主張する。

 

「不当な優遇に声を上げたのは立派よ…メキシコ人や黒人は、気軽に不満を口にするわ。“白人は本当にひどい”・“白人はクズ”とまで言ったとしても、誰にも咎められない。なのに白人が一言でも批判した途端、“人種差別だ!”」

 

マージョリーに同調する参加者たち。

 

「アジア系が企業を乗っ取っても私は黙ってる。名前も書けない黒人が一流大学に入るのも、私は非難してない。なのに、コロンビア人が同情を買って昇進し、それを責めたらレイシストなの?この国には夢も希望もない。私は善人で働き者なのに、年を取っても貧乏なまま。それでも文句を言うなって?毎日、ギリギリの生活に苦しんでるのよ」


マージョリーの不満の捌け口の如きスポットだった。

 

ここで、エミリーが独身のマージョリーとレスリーのために、“お見合いの仲介”とホワイトボードに書く。

 

「紹介できる男性を10人考えてくるの」

 

続いて、アリスの自己紹介。

 

「私はもう疲れた。いつも一人で考え事ばかり。そんな生活は寂しすぎる。だから、この会を育てて、新しい仲間を増やしたい。こうして、みんなの話を聞いてるだけで、自分に戻れる…」 

アリス


アリスは渡されたペンで、“メンバー集め”とボードに書く。

 

「白人も結束すべきよ。黒人は自分たちの命が大切だと主張して、若者たちを扇動してる。私たちの命も同じ。誰の命も大切なの。白人は優秀で寿命も長い。支え合いは得意なの。それが事実よ。事実を認めるのが悪いこと?」

 

アリスをハグしたジェシカが続いて自己紹介する。

 

「私の父は、KKK(クー・クラックス・クラン)の支部長を務めてたの。私も生まれた時からメンバーよ。今は活動の場がインターネットに移ってる。普段は人にKKKだとは言わないの。風当たりが強いでしょ。マスコミにも叩かれてる。恐ろしい怪物みたいに。私が怪物に見える?4人の母親で5人目がお腹にいるのよ。この会がすごく気に入ったわ。変化は母親から始まるの。赤ちゃんを教育するから。私は暴動を起こす気はないわ。“黒人をリンチしろ”なんて言わない。常識的な話をしたいだけ。多文化主義は失敗よ。これからも有色人種は白人を嫌い続ける。お互い様よ」 

ジェシカ


次に二人の子供を持つキム。

 

「もっと産みたかったけどお金がなくて。融資を受けたいと思っても、ユダヤ系の銀行はまず通らない…1776年に白人がアメリカを建国したのよね?その国が目の前で奪われようとしてる。夫が経営してる店だって収支はギリギリよ」

キム


「不法移民が万引きするから」

「有色人種の若者は、文句ばかりで礼儀知らず。店に押しかけては大騒ぎするの…イラつかせる作戦としか思えない。最も理想的なのは、単一民族の社会よ。国民が一つになり、市場も正常化するわ。ジャーナリズム専攻だった。この知識を活動に生かしたいの。マスコミをユダヤ系から取り戻さないと。その前にまず、会報を発行したいと考えてる。それを配れば、私たちの思想は広まるわ」

 

最後に、キムの店で2週間前から働き始めたレスリー。

 

「正直に言うと、キムに誘われてきたの。昔の私は、ひどい友達が多かった。生まれが悪いせいでね。だけど、刑務所に入って、いい仲間に出会えたの。あの生活が懐かしい。毎日指示に従って行動するのは気持ちがよかった。それで、出所後に仲間の紹介で、キムの店へ。おかげで心が安定している。子供たちが本当に可愛くて、2人のためなら何でもできる。あんな家族を持ちたい。こんなあたしを何も言わずに受け入れてくれた。だから何かの役に立ちたいの」 


エミリーが「この目標も加えたいの」と言って、白板に書かれた「“女性解放よりも、女性らしさを”」という文字を指差す。

 

「女性解放論者(フェミニスト)はこう言うわ。女性の権利のために闘うと。男と同じになれと言ってる。考えてみて。男性が求めるのは、どんな女性?…病気が蔓延する国から来た、ぜい肉の塊みたいな茶色い肌の女性?強くて才能のある白人男性にふさわしいのは…従順な妻よ。分かる?聖書が示す妻の役割を果たしてこそ、強い家族を築ける…なのに夫婦の在り方は、1960年代(公民権運動のこと/筆者注)に変わってしまった。伝統的な家族が崩壊したの。それが間違いよ」 


嗚咽を漏らしながら話すエミリーに同調し、称賛する参加者たち。

 

しかし、アリスが議事録をメールで送ると言った際、「証拠を残すのはマズいわ」とマージョリーが指摘すると、エミリーは興奮して食って掛かる。

 

「何がマズいわけ?今日私たちが、1つでも法を犯した?」

「いえ、ごめんなさい」

 

そこでキムが、会報について話す。

 

「うちは自宅教育を始めるから、役に立つ教材が必要なの。学校ときたら…」

「ゆがんだ教育を教えるのね。手伝うわ」とエミリー。

 

レスリーは「いっそ、学校作ったら?」と提案し、「素晴らしいアイディアね」とエミリーは、「実は、もう絵本を描いているの」と皆に見せる。 


会報の話に戻り、「この辺りに住む、不法移民のリストを作る?居住地を知らせるの」とマージョリーが提案する。

 

それに対しエミリーは、「創刊号は慎重にいきましょう。あくまで主流から外れず、過激な内容は避けるの。表向きはソフトに、そうすれば人々にすんなり受け入れられる。私たちは誰にも怪しまれない秘密兵器よ。ひそかに心に入り込むの」(「ソフト/クワイエット」の含意/筆者注) 


会が盛り上がる中、エミリーは教会の神父に呼ばれた。

 

「帰ってくれ。面倒はごめんだ…帰るなら通報はしない。今すぐだ」 


問答無用に言い渡されたエミリーはすぐに切り替え、皆に自宅でワインを飲まないかと誘う。

 

ジェシカとアリスは帰路に就き、マージョリーとレスリーはキムの店でワインを買うエミリーと共に、キムの車に乗り込んだ。

 

車の中でレスリーは、古着のネットショップを作るつもりで、その売り上げを活動に使えないかとエミリーに話しかけ、その服のモデルになってくれないかと頼むのだった。

 

エミリーは了解し、学校開設の願望を口にする。 


店でエミリーが品物を選んでいると、「ちょっと、店に入らないで」という声が聞こえ、アジア系の女性二人が店に買い物に入って来たのを見て、咄嗟(とっさ)にエミリーは身を隠した。

 

「閉店中よ」とキム。

「すぐ済むわ。ワインを買うだけ」とリリー。

「関係ない。閉店なの」。

「私も仕事で疲れているの。一番高いワインを買うから…」とアン。

「ここは私の店よ。拒否する権利があるの」


「そうだけど、疲れたオバサンの意地悪でしょ」とリリー。

 

この言葉にキレたエミリーが前面に出て来て、アンは「帰ろう」とリリーを誘うが、リリーは「たまには言い返して」と動こうとしない。 

アン


「ジェフの妹よ、行こう」とアンがエミリーの方を差して、リリーが振り向いた。

 

「待って。買いなさいよ。さっき言ったわね。一番高いワインを買うと…」

 

帰ろうとした二人だったが、アンはワインを取ってレジに向かい、300ドル払った。

 

ドアに向かうと、立ちはだかっていたマージョリーが、言いがかりをつけてくる。

 

「現金で300ドルも持ってるなんて、売春婦か泥棒?」

「ウェートレスよ」

「待ちなよ。国はどこなの?」

「密入国者とヤる中国人かな」とレスリー。

「“見下してもいい人種”だと思ってるのね。通して…」


「ヘイ!お礼は?レズビアン」とマージョリー。

「姉妹よ…バカ女」

 

ここでマージョリーが「何て言った?」とアンを突き飛ばし、それを見たリリーが「アンに触るな」とマージョリーに向かっていくと、掴み合いになる。

 

そこにキムが拳銃を持って二人に向け、「出て行って」と店から追い出す。

 

窓の外からリリーがエミリーに向かって言い放つ。

 

「刑務所の兄貴がどうなるか知ってる?レイプ犯はヤられるのよ!」 

リリー


「あんな話、ウソでしょ?」とマージョリー。

「あの子が誘ったの。レイプなんてウソよ!」とエミリー。

 

これも虚言だった。

 

そこにエミリーの夫・クレイグが迎えに店に入って来て、興奮して泣くエミリーを抱き締める。

 

「何があった?」

「脅されたの」

「ジェフを刑務所送りにした女よ」とキム。 

クレイグ(中央/ジェフはエミリーの兄)



アンがエミリーの同級生だったと分かったレスリーは、二人の家へ行こうと言い出す。

 

「あの女を思い知らせなきゃ。住所分かる?」

「ええ」

「今すぐ行こう。嫌がらせしてやるの。パスポートを盗むとか。バレないよ」

「もういいよ」とクレイグ。

「痛い目に遭わせなきゃ、分からない連中よ」とマージョリー。

「みんながイヤなら、あたしだけでも行く。許しちゃダメ」とレスリー。

 

レスリーが盛んに扇動し、マージョリーもそれに乗り、エミリーも笑顔になっていく。

 

「エミリーが行くなら…少しだけよ」とキム。

「いいわ。気を晴らしに行こう」

「高校時代みたい。盛り上がってきたわ!」

 

それに対し、クレイグは否定的な反応を示す。

 

「分かっているのか?」

「ただのイタズラよ」

「どう考えても重罪だ。いいか。不妊治療がうまくいかなくて、君も取り乱している」

「赤ちゃんのことは関係ない…腰抜けになりたいなら止めないわ。毎日、妻に軽蔑されたいの?…男なら勇気を出して礼儀を教えてやるの。自分の妻がバカにされたのよ…私にタマなしだと思われたいの?」


「いや…」

 

エミリーに説得されたクレイグは位置情報でバレるからと、全員に携帯を置いて行くように指示する。

 

全員がキムの車に乗り込んで、マージョリーが音楽をかけて盛り上げるが、クレイグはそれを止めされる。

 

クレイグはあくまで冷静で、人に見つかった際の逃げ道などを確認する。

 

アンの家は高台にあり、湖が見え、持ち家と知っているエミリーは、クレイグに聞かれ、「たまに来て監視してるの」と答え、「もうやめるんだ」とクレイグが諭すがエミリーは首を横に振る。

 

ここから開かれるのは、想像だにしない女たちの潜在的機能(予期せぬ結果)たる暴走の光景だった。

 

 

 

2  「私たち、やり遂げたわ」

 

 

 

アンの家に着くと、「私のアパートよりずっと広い」とマージョリーが妬みを口にする。

 

「やるなら今しかない。でも5分だけだ。何をするかは知りたくもない。俺が呼んだら出ろ」とクレイグが指示するが、誰も真剣に聞いていない。

 

「家に誰もいないのに何で5分だけ?」と聞いてくるレスリーに、クレイグは「危なっかしい」とエミリーに向かって言うが、「レスリーは大丈夫よ」とエミリー。

 

「5分きっかり。それ以上はダメだ」とレスリーに念押しする。 


家に近づくと、「この家に入るのはマズいはまずい、道路から離れすぎる。逃げる時、誰かに見られるぞ」とエミリーに忠告するが、反応せず家へ向かう。

 

ワインを持ってはしゃいで大きな声で喋るレスリーとマージョリーを制止するが、聞く耳を持たず、クレイグに指示され、窓を割らずにレスリーが置き鍵を見つけて家の中に侵入するのだ。 


「あと4分だ。俺は外にいる。キム、時間を守れよ」


「冗談の通じない男になったね」

 

広い家の中を見渡し、前開きの洗濯機と乾燥機があると、コインランドリーを使っているマージョリーはまたも妬みを口にし、ピアノも子供の頃から欲しかったと弾き始める。

 

勝手に冷蔵庫を開け、酔っぱらってきたレスリーはグラスを落として割ってしまう。

 

キムとエミリーは2階に上がって、パスポートを探し出し、皆ではしゃぎながら、レスリーはライターで燃やすと言い出す。 


クレイグが迎えに来た。

 

「まだ5分たってない」とエミリー。

「ここまでだ。ズラかるぞ…エミリー!もう行くぞ!」

 

興奮する4人が帰る気配を示さないでいると、アンが車で帰って来た。

 

「隠れろ。急げ!隙を見て逃げるんだ」とクレイグ。 


慌てた5人は灯を消して隠れる。

 

「だから言ったろ!」とクレイグが怒ると、エミリーがクレイグの頬を叩いた。 


家のドアを開け、入ろうとしたアンは異変に気付き家から出て行くと、エミリーが捕まえてと言うや、クレイグは抵抗するアンを捕らえて椅子に座らせ、「すまない。ただのイタズラなんだ。出て行くから許してくれ」と謝罪する。 


しかし、レスリーはアンを拘束し、キムは拳銃を向ける。

 

「何をしてる。行くぞ。外に出るんだ。ここまでだ」と指示するが、マージョリーがアンの顔を抑え、レスリーが叫び抵抗するアンの口をガムテープで塞ぎ、「声を出したら、ぶっ殺すからね」と脅す。

 

「あんたが、デカい口を叩くからよ!」

 

クレイグはエミリーを隣室に連れ出し、「もう冗談じゃ済まないぞ。仕事はどうなる?刑務所行きはごめんだ」と訴える。 


「分かったから、女みたいにメソメソしないで。もうウンザリよ」

 

クレイグは拳銃を向けているキムに、「行くぞ!」と声をかけて外へ出た。

 

そこに帰って来たリリーと出くわし、抵抗して叫ぶリリーを抱きかかえ、「中で説明する。頼む。本当にすまない。暴れないで。抵抗しないでくれ」と宥(なだ)めながら家の中に入るが、キムに拳銃を向けられ、アンと同じように拘束されてしまう。 


嫌気が差したクレイグは「何のつもりだ!」と怒りを露わにし、エミリーが頬に手を触れると「触るな!」と言って叩(はた)き、呼びかけても無言で家を後にした。

 

動揺するエミリーに対し、レスリーは、「クレイグは必要ない。あたしらだけでやる。あんたは彼より強いの!」と鼓舞する。

 

エミリーが一旦外に出ようと声をかけ、レスリーは雇い主であるキムに二人を狙ってろと指示し、状況を支配していくのだ。

 

「バラす気が失せるまで、脅せばいい」とレスリー。


「私には無理よ。子供を失いたくない」とキム。


「あなたが必要なの。私一人じゃできない」とエミリー。


「やるしかない。あの二人をとことん追い詰めるの。腹を決めて」とマージョリー。

 

最悪の事態に皆が激しく動揺する中、レスリーは「落ち着いて考えよう。状況を整理してあげる」と冷静に言い放ち、具体的な指示を出していく。

 

まず、店に来る警官から信用されているキムには、「何を聞かれても知らないと言えばいい」と指示する。

 

「証拠も消すの。指紋を全部拭き取ってゴミも捨てる。そしたら2人が、あたしらを告発してもムダ。それに痛めつければ、2人とも町を出ていく。あたしに任せて…これからが本番よ!」 


レスリーが部屋に戻ると、キムは「もう引き揚げた方が…」とエミリーに声をかけるが、エミリーは、「2人を脅して、証拠を消して去る」と答える。 


「今すぐ逃げよう」とキム。


「逃げれば?ご勝手に」

 

エミリーも部屋に戻り、残されたマージョリーが「どうする?」とキムに声をかけてくると、突然、キムは「なぜ下品な服で会合に?恥知らず!」と罵倒し、キムも家に戻る。 


マージョリーは「飲まなきゃやってられない」と部屋に戻り、鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように手を繋いだアンとリリーの手を手荒に外し、アンの携帯を取り上げ、ロックを解除するためにレスリーが口を塞いだガムテープを外した。 

リリー


アンは即座に「エミリー!お願い。誰にも言わないから、妹は助けて!」と叫ぶが、エミリーが反応せず、レスリーが代わって応対する。 


「妹を逃がしてほしい?それが、あんたの望み?逃がしてもいいけど、元気がないみたい。先に食べ物をあげない?」

 

ここから、レスリー、マージョリー、エミリーによる、リリーへの虐待が始まる。

 

エミリーが体を押さえ、マージョリーとレスリーがスナック菓子やバナナや酒を無理やり口に詰め込み、エミリーはヘアパックだと言って、マヨネーズを髪に撫でつける始末。 


携帯の軽快な音楽をバックに、レスリーはアンに対しても服を剥がしたり、嫌がらせを続け、その様子をマージョリーが動画に収める。 


それに気づいたエミリーが、「証拠は残すなと言ったのに、何やってるの」とマージョリーを叱責する。

 

エミリーは弱り切ってるアンの正面に立ち、顔を近づけて脅す。

 

「こっちを見なさい!私たちは、ここに来た?答えて!来てないわよね」

「しゃべったら後悔するよ」とレスリー。

 

その瞬間、リリーが激しく痙攣し、泡を吹き出し、藻掻(もが)き苦しんでいる。 


2人のテープを外すと、アンは「ピーナツアレルギーなのよ!早くエピペンを」と叫ぶ。 


「悪いけど聞こえないね」とレスリー。

 

「お願いよ。私の寝室にあるの」と懇願するアンが、リリーの頬を叩く。

 

「ダメよ。死なないで…お願いよ」

 

そこに、レスリーが寝室から抗アレルギー治療薬を持ってきて、アンは「早く打って!」と叫ぶが、レスリーは「もう手遅れだね」と投げ捨てる。 


リリーはショック死し、アンナは叫び、泣き崩れるばかりだった。

 

「そんな…ウソでしょ」と言うや、マージョリーは腰を抜かしてしまうのだ。

「なぜ、こんなことを!」とアン。

「自業自得よ」とレスリー。 


レスリーのこの言葉に反応し、キムは「その子が抵抗するから…おとなしく従えばよかった。自分で招いたのよ」と責任を被害者に押し付ける。

 

アンがリリーに「戻ってきて」と泣き、嘆いている間、レスリーは、「何してるの?…指紋を拭き、ゴミを捨てる」と家の掃除を皆に指示するが、他の3人の動揺は収まらない。

 

「子供を失うわけにいかないの」とキム。

「誰のせいでこんな目に…全部、あなたのせいでしょ!」とエミリー。


「ふざけんな!あんたが始めたんだろ!」とレスリー。


「違う!あなたよ!」

「手伝ってやったのに、このクソ女!」

「うるさい!誰のせいでもないよ!アレルギーだなんて知らなかったし…」とマージョリー。

 

今や誰の叫びも喚きも耳に入らないエミリーは、一呼吸おいて、マージョリーとキムを呼び、手袋を嵌めて証拠隠滅の作業に入ることを指示する。

 

「レイプを装う。レイプ事件なら女は疑われない」とレスリー。


「私はごめんよ。もう引き揚げよう」とキム。

「ダメよ。後始末しないと」とレスリー。

「仕方ないの。早くやって」とエミリー。

 

レスリーは抵抗するアンに対して「これで思い知ったでしょ、クソ女」と罵倒し、レイプされた状態に擬装(ぎそう)していくのだ。

 

凄惨な状況に、「もうやだ。誰か助けて…帰りたい」と零(こぼ)しながら、ピアノを拭くマージョリー。 


エミリーはレスリーに怒鳴ったことを詫び、後始末を頼む。

 

「…さっきは取り乱してたの。あなたは悪くないわ。最後の始末はできそうにない。あなたは強いでしょ。だから…」


「いいよ。やってあげる…あんたのために」

 

エミリーはレスリーを抱き締める。

 

「その代わりモデルを…」と言って、古着のネットショップを作る服のモデルを依頼するのである。

「いいわ」とエミリー。

 

その直後、レスリーはアンの首を絞めて殺害してしまう。

 

この女の神経の異様さが、愈々(いよいよ)剥き出しになっていく。

 

エミリーは死体を包む布をキムに頼み、耐え切れず吐き下し、過呼吸になっているマージョリーを励まし、湖に沈める重りとなる缶詰を運ばせる。 


「なぜこんなことに…全部キレイにしなきゃ…」と半べそをかきながら、自分に言い聞かせ、指紋を拭き取りながらゴミを袋に入れて回るエミリー。 


泣いているマージョリーを叱責するレスリーの怒鳴り声が聞こえる。

 

「モタモタしないで!」

 

死体を車に運び、車に乗り込んだ4人はキムの舟がある湖へと向かう。 


「死体を捨てたら戻って掃除しないと…」とレスリー。

「何もかも消し去るの…私たちが来たことは誰にもバレない」とエミリー。

 

しかし、死体を湖に捨てる考えをレスリーは否定し、森に埋めた方がいいと言い出し、再び二人は激しい口論となる。

 

「作戦を考えてるのは、あたしだろ!今すぐ車を降りて、立ち去ってもいいんだよ!」 


ここでもエミリーは謝り、引き止めて嗚咽する。

 

「今度怒らせたら、あんたは終わりよ」と囁くレスリー。

 

結局、レスリーも折れ、エミリーの言う通り湖畔に着くと、エミリーが桟橋に繋がれたボートのロープを外しに行き、3人は死体を運んでボートに載せた。 



エミリーとレスリーがボートに乗り込み、二人で呼吸を合わせて漕ぎ、湖の奥まで行ったところで死体を湖に沈めた。

 

「私たち、やり遂げたわ」とエミリー。

 

二人は方向転換して岸へと戻って行った。

 

静寂が湖を支配し、夜の闇の湖の揺れる水面だけが映し出されている。

 

ラスト。

 

突然、湖面から顔を出すアン。 


荒い息遣いをするアンは地獄から生還できたのだ。

 

 

 

3  レッドラインを越えていく女たち

 

 

 

エミリーから始まり、エミリーで終わる物語。 


しかし、この物語は単なるホラー映画の範疇に収まらない。

 

人間が予測し得る事態を超えた〈状況〉に支配された時、人間が如何に脆弱な生き物であるかということを否応なく見せつけられるからだ。 

腰を抜かすマージョリー
衝撃を受け身動きできないエミリー


恐怖に慄くキム



壮絶なまでに過剰なリアリズムが物語を覆い尽くしていた。

 

目の前で惹起している〈状況〉が手に負えない刺激を量産したことで、過剰なリアリズムを生んでしまうという人間学的光景の度し難い様態。 



この過剰なリアリズムがエミリーのイデオロギーを食い尽くしていた。

 

元生徒に“生徒が帰るまでモップ掛けをするな” と伝えることを指示したファーストシーンで明らかなように、思想的にはエミリーだけが確信犯であることが判然とする物語だった。 


自らの能力不足を認めず、コロンビア人に管理職のポストを奪われた事態に息巻き、逆差別を声高に謗(そし)るマージョリーや、護身用の拳銃を持っていたにせよ、エミリーに感化されたに過ぎないキム(子供の教師がエミリー)もまた然りで、度を越した行動に走った女たちが思想的確信犯であると言い切れないのは自明だった。


そんな女たちが事態の流れに翻弄され、自らが招いた〈状況〉に支配されていくのである。 

マージョリー


キム


エミリー



ただ一人、イデオロギーを推進力にせずに〈状況〉を加速させて突っ走るレスリーの存在が、当惑するエミリーをも動かし、レッドラインを越えていくという負の連鎖を、そこだけは確信犯的に膨張させていく。 


レスリーには、作り手も認めたソシオパス(反社会性パーソナリティ障害/サイコパス)という精神病質がフル稼働しているから、予測し得る事態を超えた〈状況〉に支配されても情動混乱が起こらない。 


「これからが本番よ!」と平然と言い放った女は、犯罪それ自身を愉悦しているようなのだ。

 

アンを絞め殺すことを厭わないレスリーは、その行動によって白人至上主義の結社の期待に応えるとさえ考える女だから、エミリーの情動混乱を愚弄し、自らがイニシアティブを握って、一貫して冷徹に動いていく。

 

ソシオパスの熱量によって潮時を望む女たちを抑え、先陣を切って駆けずり回り、表面はソフトに包み、人の心にひそやかに入り込むという「ソフト/クワイエット」の戦法など呆気なくぶち壊して、エミリーらが陥ったパニックとは無縁に動く女が、物語の厄介な帰結点を招き寄せていくのである。 


もとより、確信犯的に動いたエミリーだが、提示された映像を観る限り、夫が協力的でないから動けなかった。

 

一人では何もできないのである。

 

だから、SNSで仲間を集める。

 

かくて、彼女のイデオロギーが形を整えていく。 


自分の夫に、「毎日、妻に軽蔑されたいの?」とまで言い放った彼女の白人至上主義(ホワイトプライド)という偏頗(へんぱ)なイデオロギー。 


然るにその内実は、アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)でも救われていないアジア系の見知りの富裕な姉妹に対する渦巻く感情(嫉妬・蔑視・怨念など)の化け物にまで膨れ上がり、アンガーマネジメント(怒りのコントロール)の脆弱性を晒したに過ぎなかった。

 

常に姉妹の動向を監視し続けていたという下衆(げす)な行為で分かるように、その溜め込んだ差別意識が転嫁されただけのイデオロギーの脆弱さが無残に晒されていくのだ。

 

偏頗なイデオロギーから発したエミリーの行動が思いも寄らない事態を出来させた時、今や感情の溜まり場としての貧弱なイデオロギーが行動を制御できず、犯罪の痕跡を払拭するための防衛的行動だけがエミリーの〈現存性〉を支え切っていく。

 

だから彼女の自我を支配するのは、自らが起こした〈状況〉からの必死の逃亡への方略のみ。

 

この混乱がエミリーの場当たり的行為に拍車をかける。

 

極端な楽観主義やナラティブが生むグループシンク(集団浅慮)の弊害が暴走した挙句、支配したつもりのスポットで混乱を生み、救い難い〈状況〉を出来させて、この〈状況〉に搦(から)め捕られたエミリーの脆さが存分に露呈されるのだ。 

グループシンク



それは、レッドラインを越えていく女たちの醜悪なる相貌だった。

 

斯(か)くして、パニックとは無縁な女に引っ張られた時、物語の帰結点は約束済みの悪夢に雪崩れ込んでいく。

 

極限状態に捕捉された人間の精神状態は、心理学100%の世界が教える展開と化していて圧巻だったという外にない。

 

まさに現代心理学で解読できる映画の気迫に圧倒された、全編ワンカットの90分間だった。

 

 

 

4  白人至上主義が堂々と息を吹き返してきた

 

 

 

宗教的情熱が高いイギリス人ピューリタンはWASP(ワスプ/白人、アングロ・サクソン系、プロテスタント)と呼ばれ、神の名のもとで「マニフェスト・ディスティニー」(明白なる使命)という使命感を標榜して先住民族インディアンを虐殺(ウンデット・ニーの虐殺)することで建国した国家。 

アメリカの移民と開拓


【マニフェスト・ディスティニー/1872年に描かれた「アメリカの進歩」。女神の右手には書物と電信線が抱えられており、合衆国が西部を「文明化」という名の下に征服しようとする様子を象徴している(ウィキ)】


ウーンデッド・ニーの虐殺の慰霊碑(ウィキ)



これがアメリカである。

 

この背景には、先住民族と混血したカトリックのスペインの白人入植者たち(南米)と異なって、混血を否定する宗教戒律を有するイギリス人ピューリタンが異端分子排除の精神が大きく関与する。 

【ピルグリム・ファーザーズ/絶対王制下のイギリスからメーフラワー号で北アメリカに移住した、総勢102人のピューリタンたち。画像は、「ピルグリム・ファーザーズの乗船」という絵画(ウィキ)】



このインディアン虐殺と並ぶアメリカの歴史的汚点が奴隷貿易であることは否定すべくもない。

 

大西洋奴隷貿易において黒人は、およそ350年間に及ぶ期間を通して1250万人以上のアフリカ人が奴隷として売買されてきた。

 

大西洋間三角貿易におけるアフリカからアメリカへの航路として知られる「ミドル・パッセージ」の苛酷な船旅において、約200万人が死亡した歴史的事実の異様さ。 

【大西洋間三角貿易を示す概念図。三角形の一辺をなす、アフリカからアメリカへの航路を「ミドル・パッセージ」あるいは「中間航路」と言われる(ウィキ)】



すし詰めにされた奴隷船の狭隘なスポットで鎖に繋がれた黒人は、人間ではなく商品でしかなかったから大小便の処理すらも認められず、赤痢・天然痘・梅毒などの感染症が瞬く間に蔓延していく。 

国立アメリカ歴史博物館に展示されている奴隷船の断面模型(ウィキ)


すし詰め状態の奴隷たちの様子を示す絵(ウィキ)



女・子供の奴隷に対する性的暴力は普通に横行していた。

 

世紀を超えて奴隷貿易を支配していたヨーロッパ諸国の罪は尋常ではない。

 

アメリカでの黒人差別の心理的背景が、長く「黒人は人間ではない」と考えてきた白人の定着した観念にあるのは間違いない。 

『人種』は歴史的に作られたものだった――『黒人と白人の世界史』」より



この観念が容易に変えられなかった事実は、20世紀半ばに至ってもなお出来した「エメット・ティル事件」を想起すれば十分である。

 

14歳の黒人少年が白人女性に口笛を吹いたことで隻眼(せきがん)を抉(えぐ)り出されて殺害された事件の凄惨さは、言語を絶するものだった。 

エメット・ティル/『母が息子を送り出した時と出迎えた時』リサ・ウィッティントン・2012年(ウィキ)


エメット・ティル


エメット・ティルの死



そしてトランプ政権下で惹起した、人種的マイノリティに対する警官の差別的暴力の象徴と化し、全米でBLM運動(人種差別抗議運動)の契機となったジョージ・フロイド事件(2020年5月)の衝撃に終わりが見えない。 

白人警官によって路上で殺害された黒人男性ジョージ・フロイドさん(ウィキ)


フロイドさんの死の翌日、抗議者たちはこの場所に集まった(ウィキ)


事件が発生したバス停近くの臨時的な記念碑(ウィキ)


暴動後の建物の損傷(ウィキ)


米国社会を動かしている社会運動「Black Lives Matter」(BLM)


BLM運動の広がり


全世界に広がるBLM運動/画像はニュージーランド・オークランドで



黒人大統領が二期にわたってアメリカ政治のトップになっても変わらないばかりか、寧ろ、その反動としてのホワイトバックラッシュ(白人の人種差別主義者による反動)の炸裂とも言える。

 

白人至上主義が堂々と息を吹き返してきたのである。 

白人至上主義団体「プラウド・ボーイズ」



ホワイトバックラッシュの渦中にあって、1961年にケネディ大統領の大統領で導入されたアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)のために自分は就職できないといった、白人男性からの逆差別的不満の噴出が止まらない。 

アファーマティブ・アクション



アファーマティブ・アクションの是非論が問われ、その衰退に歯止めが効かないように見える。 

アファーマティブ・アクションに対する世論調査


米における人種差別に対する世論調査



その例として挙げられるのは、同じマイノリティの中でも、アジア人に対する扱いは例外とされ、学業成績が優秀であったとしても評価基準の曖昧な「人物評価」において低い点数をつけられ、結果的に不合格になるケースが多く、優遇処置が取られているどころか、実際は事実上の人種差別を受けているのではないかという疑念が呈されているのだ。 

マイノリティ優遇は逆差別と提訴


リベラル派主導で進められてきた人種差別解消の取り組みは、大幅な見直しを迫られることになった



映画では、富裕なアジア系の姉妹が白人至上主義の女たちのターゲットにされているが、これはCNNの「アジア系米国人、5人に1人が『出自隠す』 差別や暴行に不安」という記事が参考になるだろう。

 

以下、CNNの記事からの抜粋。

 

【米国では新型コロナウイルスに関する偽情報の拡散などを受け、アジア系住民が襲われる事件が急増していた。今回の調査は米国内でアジア系を自認する成人7006人を対象として、2022年7月5日~23年1月27日の間に面談方式で実施した。ピューによると、アジア系が自分たちの文化の特定の側面を隠している理由は「恥ずかしい思いをするのが怖い」「気まずい質問をされたくない」「差別されるかもしれないと思うと不安」などさまざまだった。

 

回答は年齢や国、出生地によって差があった。自分たちの文化を隠しているという回答は、米国生まれのアジア系が約30%だったのに対し、アジア系移民は15%にとどまった。アジア系の文化を隠すという人は年齢が若いほど多く、65歳以上では5%だったのに対し、18~20歳では約39%を占めた。非アジア系に対して自分の出自を隠していると答えたのは、韓国系が約25%、インド系は20%、中国系19%、ベトナム系18%、フィリピン系16%、日系は14%だった。

 

一方、回答者の約半数は、家族の出自を反映してフィリピン系、韓国系、中国系といった民族で自分を表現することがあると答えている。アジア系米国人の半数は、米国にいる友人はアジア系米国人がほとんどまたは全てだと回答。一方、米国生まれのアジア系の場合、そう答えたのは38%にとどまった】 

アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)に抗議する人々=2021年3月、米サンフランシスコ



公民権運動の結晶点だったアファーマティブ・アクションでも救えないアジア系住民の行き場のない不満の解消が、果たして可能なのか。

 

かくて今、連邦最高裁によって、大学入学選抜時に人種や民族を考慮するアファーマティブ・アクションが「法の下の平等」を定めた憲法修正14条に違反すると判断され、違憲とする決定が下されるに至った。

 

2023年6月のことである。

 

アファーマティブ・アクションの全廃が妥当なのか否か、難しい判断だが、その是非が問われているのである。

 

(2024年4月)

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