1 「死ぬのも簡単じゃない。居候まで増えた。こいつを何とかしたら、必ず、そっちへ行く」
「昨日、そっちへ行けなくて、すまなかった。周りが騒がしくてね。新入りが越してきたんだ。近頃の奴らには驚かされる。車でバックもできないし、自転車のパンクも直せない。簡単な頼み事なのに、ランチ中だと断る。そのうち、ランチばかり取り出すぞ。その前に死ねて幸いだ。車バカの白シャツ男(ここでは、介護職員のことを指す)も、嫌がらせをしてくる。お前がいてくれたら…急いで逝けば、今日中に会えるかもな。寂しいよ」
オーヴェ |
最愛の妻・ソーニャに先立たれ、そのソーニャの墓の前で独言するオーヴェの嘆息。
近所から変人扱いされながらも、毎朝、居住地区の見回りをし、秩序を守るオーヴェだが、43年間務めた会社を59歳にして解雇されてしまう。
朝の8時になって、見回りに出るオーヴェ |
首吊り自殺を試みようとしたが、隣に越して来たイラン人女性・パルヴァネと、その夫・パトリックと、二人の姉妹の子供の家族の出現で頓挫した。
スーツに着替えて自殺を試みるオーヴェ |
パルヴァネ/車の運転でオーヴェから注意を受ける |
パルヴァネの夫・パトリック(スウェーデン人) |
再度、ロープを首に巻き、椅子を外そうとすると、玄関のチャイムが激しく鳴った。
仕方なく中断し、ドアを開けると、引っ越して来たばかりのパルヴァネが子供たちに食事のお裾分(すそわ)けを持たせ、訪ねて来たのである。
車のバックを手伝ってもらったお礼だった。
そして、夫・パトリックが梯子(はしご)を貸して欲しいと言うのだ。
お腹は空いていないと断るが、もったいないと言って受け取り、梯子については貸すことになる。
そこに、近隣の女性・アニタがやって来て、故障したラジエーターの修理をオーヴェに頼む。
アニタ/夫はALSを患うルネだが、年来の親友でありながら、車の趣味の違いで、長い間、絶交している |
オーヴェはその依頼を断るが、「空気を抜け」と指示するのみ。
家に戻り、再び自殺を試みるオーヴェ。
「最期の瞬間、脳の処理速度は上がり、現実世界がスローで見えると言う」(オーヴェのモノローグ)
―― オーヴェの脳裏には、子供の頃に死んだ母のことが浮かんでくる。
「父は静かに悲しんでいた。私も同じだ。一つ、確かなのは、誰も死から逃れられないこと。父は無口な男で、いつも家か車をいじっていた。どちらもしゃべらないからだろう」
そして、オーヴェの父との交流の思い出が蘇る。
少年の父は、財布を拾っても、それをオーヴェに渡し、拾得物室に届けた息子を見守るというほどに真正直な人物だった。
実直な父の姿を見て育ったオーヴェは、青年になり、優秀な成績を収め、それを喜ぶ父だったが、鉄道事故で逝去してしまうのだ。
オーヴェ青年 |
喜ぶ父(左) |
列車に轢かれる寸前の父(中央) |
それを見るオーヴェ |
―― 忘れようとしても忘れられない悲痛の過去が蘇ったところで、現実のオーヴェはロープを首に巻いたまま、床に倒れ落ちてしまう。
ロープが千切れたのである。
日々のルーティンとなっているソーニャの墓参で、新聞を敷いて横になるオーヴェ。
今度は、車の中にホースを引き、排気ガス自殺を図るが、青年期の出来事が脳裏に浮かんでくる。
―― 父と同じ鉄道会社に勤めるようになるが、自宅の解体を役所に迫られ、自ら改修工事をする。
その渦中だった。
オーヴェの隣家が火事に見舞われたのである。
咄嗟(とっさ)の判断で、オーヴェは家中の住人を助け出したが、その現場に役所の“白シャツ”の男がやって来て、敢えて消防隊に消化活動を行わせず、理不尽にも、オーヴェの家も消失してしまうに至る。
消失した家屋跡に立つオーヴェ |
家を失ったオーヴェは、停車中の列車で寝込んでしまうが、起きると列車は走り出していた。
切符を持たないオーヴェだったが、目の前に座って本を読んでいた女性が払ってくれた。
ソーニャ |
教師志望だと言うソーニャとの運命的な出会いである。
オーヴェは、毎朝、6時半の電車に乗り、ソーニャを探したが、3週間後、やっとの思いで再会することができた。
軍人と偽り、お金を返すと言うオーヴェに、ソーニャは「食事のほうが、うれしい」と答え、二人はレストランで待ち合わせする。
レストランで食事をしながら、オーヴェは正直に吐露する。
「ウソをついてたんだ。僕は軍人じゃなく、列車の清掃係だ。家は焼けた。もう行くよ。楽しかった」
そう言って立ち上がると、ソーニャがオーヴェの顔を引き寄せ、キスをした。
その後、ソーニャに勧められ、建築関係の資格を取り、オーヴェはソーニャにプロポーズし、快諾される。
―― またしても、ガス自殺に失敗したオーヴェ。
ガレージのシャッターを激しく叩く音がして、外に出るとパルヴァネがいた。
夫が梯子から落ちたので、免許がないパルヴァネが病院へ運んで欲しいと言うのだ。
病院で二人の子供の相手をして、絵本を読むオーヴェ。
偏屈なオーヴェだが、子供たちはすっかり懐(なつ)いている。
今度は、鉄道自殺をしようとホームに立つが、その前に一人の男性が線路に転げ落ちた。
列車が迫る中、オーヴェは線路に降り、その男性を救済するのだ。
パルヴァネが訪ねて来て、娘がオーヴェの絵を描いたと言って、その絵を渡すのである。
どこまでも闊達(かったつ)で、屈託のないイラン女性である。
オーヴェが邪魔にしている猫がケガをしているのを見つけたパルヴァネは、オーヴェの家に無理やり入れて、結局、オーヴェが飼うことになった。
「死ぬのも簡単じゃない。居候まで増えた。こいつを何とかしたら、必ず、そっちへ行く」
いつものように、ソーニャの墓に語りかけるのだ。
初老の男の日常に、少しずつ、変化が見えていくようだった。
2 初めて会った列車の中で、年老いた二人は見つめ合い、互いの手を握り締めていく
運転を習いたいと言うパルヴァネの申し出を一旦は断るが、見るに見かねて、真剣に教え始めるオーヴェ。
その後、ソーニャのお気に入りのカフェに連れて行き、ミルフィーユを一緒に食べる。
そこで、仲が悪いとされている、アニタの夫で、ALS(運動神経系が劣化し、失っていく疾病)を患うルネとの経緯を話し始めるのである。
「私たちは似た者同士で、最初から息があった。求める理想も同じ。地区の会合で、私が初代会長、ルネが副会長に選ばれた」
オーヴェとルネの関係を、パルヴァネに話すアニタ |
二人は、地区内の禁止ルールを次々に作り上げていった。
しかし、車の好みの違いが二人の仲を分かつことになった。
オーヴェはサーブ、ルネはボルボ、それぞれが新車に買い替え競争をし、いつしか、関係は疎遠になっていく。
そして、ルネがドイツのBMWを購入したことで決裂するに至った。
現在、オーヴェはALSを患うルネのもとに足を運び、自分の思いを告げる関係にまで修復されている |
パルヴァネの学科試験の際に、留守を任されたオーヴェは家の食器洗浄機を直し、妹を寝かせ、姉の建築の話の相手をする。
そんな折、ソーニャの教え子だったという新聞配達の若者と出会う。
「読み書きできない俺をバカ扱いせず、全部教えてくれたよ」
この一言で、若者の自転車を修理して届けるオーヴェ。
そこに、ホームから転落した男性の救出を目撃した地元の女性記者が、取材したいと訪ねて来るが、オーヴェはそれを断り、彼女をガレージに閉じ込めてしまう。
パルヴァネはその対応を見て笑い、オーヴェも一緒に笑うのだ。
映画で見せるオーヴェの哄笑(こうしょう)だが、それでもなお諦念しない男の自死への意志。
オーヴェが、ソーニャの教え子だった若者のゲイの友人を家に泊めることになったのは、銃による自殺を図ろうとする真っ只中だった。
カミングアウトして親に追い出されたのである。
ホテルではないと断るが、「ソーニャ先生なら助ける」と言われ、受け入れるオーヴェ。
翌朝、青年が朝食を作り、日課の見回りについて行くと、ルネの肥満の息子も運動を始めたと言って、同行する。
その息子から、3年前から抵抗していたが、明日、ルネが施設に入ると知らされる。
そのことをソーニャに話さなかったのは、アニタの気遣いと知り、オーヴェは役所との全面戦争に入ることを決意し、その足でルネの家に向かい、玄関先でアニタに捲(まく)し立てた。
「書類を渡せ。役所や福祉課から来たルネに関する書類を全部だ」
その書類を持つや、家の電話が使えないオーヴェは、パルヴァネの家で役所に電話をかけて怒鳴り続けるが、一方的に切られてしまう。
それを見ていたパルヴァネは、いつもの明朗快活な表情と切れ、オーヴェを難詰(なんきつ)するのだ。
「私を励ましてくれた人が、ただ座って、自分を憐れむわけ?“周りはバカばかり”と。そして諦める。解決できるのは、地球上で自分だけだから。でも一人で、何もかも解決できない。あなたでも。もういい。帰ってよ。ウンザリだわ」
ここから、映画の風景が一変する。
沈黙の後、オーヴェが話し出す。
「ソーニャの提案で、赤ん坊が生まれる前に、旅行することになった。彼女はバスで行きたいと。そのほうがロマンティックだと言ったから、私は反対しなかった。費用も安く済むしね」
スペインのホテルで穏やかに過ごした二人は、バスの帰路で転落事故に遭遇する。
軽症で済んだオーヴェは、バスの下で意識を失い、病院に搬送されたソーニャのベッドの横に座り続けた。
ソーニャを捜すオーヴェ |
バスの下敷きになって動かないソーニャを救い出す |
「ずっと隣に座っていた。誰も話しかけてこないのが救いだった。だが、ある日、彼女は目覚めないと告げられた。ところが奇跡が起きた。人生で最高の、しかし同時に最悪の出来事だ」
ソーニャが目覚め、差し出すその手を握るオーヴェ。
翌日、喪われた赤ん坊のことを伝え、嗚咽を漏らすソーニャを抱き締める。
「悲しみは私を強くした。最初のうちは、怒りを力に変えたんだ。ソーニャは勉強を続けた。残り1年の過程を修了し、無事に卒業したが、職はなかった…当時の学校にはスロープなどない。それでもソーニャは、ある記事に希望を見出した。問題児を集めたクラスを設けた学校があったんだ。今で言う“特別学級”さ」
ソーニャの車椅子に合わせて、自宅を改築するオーヴェ |
しかし、成績は優秀でも、車椅子の教師は採用されなかった。
「私は絶望のあまり、すべてを潰す覚悟だった。バス会社、酔った運転手、ワイン商、旅行会社、全部だ。スペイン、スウェーデン両政府に手紙を書いたが無視された。私は何とか制裁を下したくて、奴らを片っ端から訴えた。でも結局、状況を変えたのはソーニャの一言だった」
「今を必死に生きるのよ」
「その夜、車を走らせ、必要なものを作った」
オーヴェは自らスロープを作り出したのだ。
「ついに彼女は教師になった…子供のために戦ってた。自分は失ったのに。そして、半年前、ガンで死んだ。後を追うと約束した」
その話を真摯に聞き、パルヴァネはオーヴェの手をしっかり握り締める。
ルネの迎えに介護施設の職員(“白シャツ”)がやって来た。
一歩も通さないというアニタ。
決定事項の書面を翳(かざ)し、任務を遂行しようとする職員の前に、オーヴェを取材に来た例の記者が、施設の所得隠しの証拠を突き付け、引き下がるように迫った。
「尻尾を巻いて逃げていった。情けないものだ」
オーヴェが最も嫌う“白シャツ”の車/見回りでいつも怒っている |
口元を緩ませながら、ルネに語りかけるオーヴェ。
「昔の者は気概だけはあった」
オーヴェがそう話すと、ルネは微(かす)かにオーヴェの方を向き、笑みを返した。
翌朝の見回りの時だった。
オーヴェが路傍で倒れ、救急搬送されていく。
オーヴェのベッドにパルヴァネが付き添い、担当医から話を聞く。
「お父様は心臓の病気です。要は大きすぎるの。ただ、命に別状はありません」
それを聞いたパルヴァネは笑い出す。
「本当に死ぬのがヘタクソね」
笑いが止まらないパルヴァネが、突然、産気づいた。
退院したオーヴェは、かつてソーニャが妊娠した際に作った揺りかごを、パルヴァネの家に運び、そこに生まれたばかりの赤ん坊を入れ、好々爺(こうこうや)となってあやすのである。
すっかり、パルヴァネの家族の一員になっているオーヴェが、そこにいた。
雪が深く積もる朝、8時になっても、雪かきをしていないオーヴェのことが気になったパルヴァネは、不審に思い、パトリックと共にオーヴェの家に走っていく。
2階に上がると、オーヴェは猫を胸に乗せ、ベッドの上で横たわっていた。
既に、息絶えていたオーヴェの遺書を読むパルヴァネ。
「“余計な想像はせんでいい。医者の診断どおりになっただけだ。心臓が大きいというのは、何でもないようで、重大な問題だ。遅かれ早かれツケがくる。葬式は、まともな教会で手配してくれ。空に遺灰をまくなんてのは、まっぴらご免だぞ。私を認めてくれた人だけで、静かな式を頼む…”」
教会で葬儀が行われ、立錐の余地がないほど、多くの住人たちが集まった。
変人であっても、オーヴェの人柄が醸し出す情の厚さを知悉(ちしつ)し、受容する人々が、聖なるスポットに集合し、故人を偲(しの)ぶのである。
ラストシーン。
オーヴェとソーニャが初めて会った列車の中で、年老いた二人は見つめ合い、互いの手を握り締めていく。
それ以外にない、決定的な構図だった。
今度こそ、昇天し、最愛の妻のもとに逝ったのである。
3 グリーフは吐き出すことで癒される
人気が高いこのスウェーデン映画は、コメディの筆致ながら、基本的にグリーフ(悲嘆)の物語である。
「衝撃期」⇒「喪失期」⇒「閉じこもり期」⇒「再生期」というプロセスを遷移する、所謂、「グリーフワーク」のシビアな心的行程の渦中にあって、男は絶望の極みに囚われていた。
〈生〉に対する絶念の心境である。
絶対に喪ってはならない最愛の妻・ソーニャに先立たれた主人公・オーヴェにとって、余生の残り火など、一欠片(ひとかけら)の意味すらなかった。
「昨日、そっちへ行けなくて、すまなかった。周りが騒がしくてね。車バカの白シャツ男も、嫌がらせをしてくる。お前がいてくれたら…急いで逝けば、今日中に会えるかもな。寂しいよ」
ソーニャの墓参で独言するオーヴェの嘆息は、あまりに辛すぎる。
ソーニャが逝去してからの彼の日常は、根源的に破壊されているのだ。
腹の立つことばかりの「非日常の日常」が、半年間もリピートされていくのだ。
オーヴェのグリーフワーク(喪の作業)が未完結だからである。
寄る辺なき関係状況の只中で、宙刷りにされた自我だけが震え、「絶対孤独」の世界に拉致されていた。
未完結のグリーフワーク ―― その内実は「喪失期」の心的行程の只中にあったと言えるだろう。
その「喪失期」の中枢に、「閉じこもり期」が喰い込んできた。
視野が狭く、柔軟性に欠けるが故に、他者を寄せ付けない。
「バカが騒ぐせいで、彼女の声の記憶がかき消されてしまう。ソーニャ以外の人間は、どうでもいい」
オーヴェの部屋に飾られているソーニャの写真 |
だから、急いで逝く。
それだけだった。
繰り返される自殺未遂。
頓挫する自殺未遂 |
この究極の振れ具合のうちに、侵入的に想起するのは、少年期での父とのエピソード。
オーヴェの言葉を借りれば、「最期の瞬間、脳の処理速度は上がり、現実世界がスローで見える」という記憶が、反射的に垣間見せる世界が開かれるのだ。
鉄道会社に勤めていた父の仕事を手伝っていた時だった。
オーヴェが財布を見つけると、父の知り合いの男・トムが横取りしようとした。
オーヴェは、それを取返し、殴られるのを覚悟した。
瞬時に、父がトムを取り押さえる。
「見つけた奴がもらう決まりだろ!」とトム。
「オーヴェ、財布は好きにしろ。お前が見つけた」と父。
オーヴェはそれを自分の物とはせず、拾得物室に届けたのである。
「トムの話はしないの?」
「告げ口はしない主義だ」
「僕も、もらう気だった」
「知ってるさ。でも結局、届けたろ。何事も正直が一番だ。だが正直になるには、後押しが要る」
オーヴェの自我形成のルーツになった重要なエピソードである。
―― 自死の際(きわ)で、オーヴェの脳裏に浮かぶ思い出の中で決定的なのは、ソーニャと共有した懐かしくも、タイトロープの橋梁(きょうりょう)を、共に渡り切った鮮烈な記憶。
いつも、そこに還ってしまうのだ。
彼女と共有した日々の記憶は、それだけは手放せないオーヴェの「絶対時間」であったからである。
「ソーニャは勉強を続けた。残り1年の過程を修了し、無事に卒業したが、職はなかった…当時の学校にはスロープなどない」
しかし、成績は優秀でも、車椅子の教師は採用されなかった。
「私は絶望のあまり、すべてを潰す覚悟だった。でも結局、状況を変えたのは、ソーニャの一言だった」
「今を必死に生きるのよ」
この一言が、オーヴェの推進力となって爆裂する。
誰の助けも借りず、一人でスロープを作り出したのだ。
車椅子の教師になったソーニャの後半生(こうはんせい)は、子供のために戦い切った〈生〉で埋め尽くされた。
そんな不撓不屈(ふとうふくつ)の〈生〉を繋いできた妻を喪った男の〈生〉が、光彩を放つ何ものをも奪われた空洞の時間を曝すのは不可避だったのである。
「後を追うと約束した」からである。
そんな男が変移していく。
男の変移を決定づけたのは、一人の鷹揚(おうよう)なイラン女性だった。
パルヴァネである。
彼女はオーヴェの悲嘆を全人格的に受け止め、その手をしっかり握り締めたのである。
オーヴェの吐露は、隣人の過去を知らないイラン女性の琴線に深々と触れていく。
だから、「告白」になった。
吐き出し切ったからである。
これが、オーヴェの〈現在性〉に纏(まと)わりついている自死への蚕食(さんしょく)を、根源的なところで喰い潰していく。
掬(すく)い込んでいくのだ。
グリーフは吐き出すことで充分に癒されるのである。
「生きるって感じだろ」
パルヴァネの長女に吐露したオーヴェの言葉である。
悲嘆を極めた男のグリーフが癒えたことを示す決定的な言辞だった。
―― 回想シーンを小出しにしたことが、終盤の「告白」のシーンで、主人公の悲嘆の全容を一気に回収する感動譚に収斂されていったのだ。
ソーニャと初めて出会った日 |
ソーニャと初めて出会った日/忘れられないソーニャの笑顔 |
この映画の成功は、その一点にある。
ハンネス・ホルム監督 |
(2021年12月)
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