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2020年9月19日土曜日

オーバー・フェンス('16)   山下敦弘

 


<「普通」という心地よい観念に隠れ込む男」と「壊れた女」の檻が解き放たれ、何かが起こっていく>

 

 

 

1  ハクトウワシの求愛パフォーマンスに同化する女との出会い

 

 

 

【以下、心理分析含みの批評をインサートしながら、梗概をまとめていきたい】

 

函館訓練校の建築科。 

建築科の風景

建築科でのソフトボールの気乗りのしない練習


様々な職歴を持ち、幅広い年齢層の男たちが訓練を受けている。

 

実家のある故郷に戻り、大工の修行をする白岩義男。 

訓練校まで自転車で通う白岩

バツイチの中年である。

 

その白岩(しろいわ)が学校帰りに、路上で、一人の若い女と中年男との言い合いに遭遇する。 


「私が言ってるのは、愛情表現のこと…ダチョウだって、もっと愛情表現するよ」

 

女がそう言うなり、ダチョウを真似た踊りのパフォーマンスを始めるのだ。

ダチョウのパフォーマンスをする女
 
同上

笑みを浮かべた白岩と、女の視線が合う。

 

これが、白岩と女の出会いだった。

 

アパートに引っ越して来てまもない白岩は、一人で弁当を買い、2本の缶ビールを飲むという生活を淡々と送っている。 


訓練校建築科の同期である代島(だいじま)に誘われ、飲みに行った義男は、バーの出店計画を打ち明けられる。

 

白岩を副店長として、開店の協力を求めてきたのだ。

 

自分には向かないと断る義男の前に、キャバクラで働いている先日の女が現れた。

 

彼女の名は、田村聡(さとし)。

 

「名前で苦労したけど、親を悪く言わないで。頭悪いだけだから」 


聡の言葉には毒がない。

 

店を出た際、代島に出店の件を念押しされた白岩が帰ろうとすると、聡から強引に車に誘われ、アパートに送ってもらうが、何事も起きない。 

代島(左)と白岩

聡と白岩


営業経験のある代島に、「この店、やれる女、多いっしょ」と言われていても、白岩にはその気がない。
聡の愛車

 

部屋に戻った白岩は、整理していない荷物の中から、一通の手紙を取り出した。

 

「これしきのことで、娘を実家に帰してよこす、君の無責任で冷たい仕打ちには腹も立ち、娘も、もう、そちらに帰す気は全くありません。娘はまだ若く、失敗は失敗として、再出発の方法を探してやりたく思っていますので、今後のことは、一切、口出し無用に願います。子供については、一応、君は父親だが、会わせる気はなく、もし異論があるならば、法的に異議を申し立てるよう願います。今後、いかなる音信は不要で、直接連絡を取るようなことはしないでいただきたい」


 

この義父からの手紙を燃やした白岩が外に出ると、聡が車から顔を覗かせる。 


白岩がキャバクラに現れた時から、聡は白岩に好意を持っていた。

 

「聡が会いたいと言っていた」という代島の伝言で、聡のバイト先の遊園地に、いつもの自転車を漕いで会いに行く白岩。 


「何しに来たの?」


「え?代島君が、聡が会いたがっているから…」

「だから、しょうがなく来たわけ」

「そうじゃないけど…俺も、会いたかったから」

 

既に、白岩の感情を確認するほどに、聡の思いの強さが表現されている。

 

だから、こんな言葉に結ばれるのだ。

 

「ハクトウワシの求愛、知ってる?ガッツ、すごいよ。空中で、脚と脚をガッとつないでさ、くるっくる回りながら落下するの。ほんとに恋に落ちるの」

 

そう言って、聡のハクトウワシの求愛パフォーマンスの踊りが始まった。 


その踊りに惹きつけられる白岩。

 

誘われるまま、自転車の後ろに聡を乗せた白岩が彼女の実家に着くと、離れの部屋に上がった。

 

二人で缶ビールを飲み始めるや否や、聡は突然立ち上がって台所へ行き、薬を飲み、全裸になって体を洗い清めるのだ。 


恐々と、覗き見る白岩。 


「これやらないと、身体が腐る気がして」 


そう言い放って、全裸のまま白岩に近接し、激しく唇を重ね、交接する。 



以下、その直後の二人の会話が、物理的・心理的に近接した関係を呆気なく破壊してしまう。

 

「本当は、結婚してるの?」

「してないよ」

「じゃ、なんで指輪してるの?教えて。ずっと気になっていたんだけど、黙っていたんだよ」


「いや、もう、別れてるから」

「したら、何で別れたわけ?子供もいたんでしょ」

「先に自分のこと話せよ。代島と寝たことあるだろ」

「寝たよ、だから?流れで一回寝ただけだよ。もういい?何で指輪してんのか、言ってよ!言えないの?あ、言えないようなことしたんだ!奥さん、殴ったんだ!」

「落ち着けよ」

「今日は落ち着いていたのに。あなたのせいで、こうなったの!何で、正直に言ってくれないの?奥さんのこと教えてよ!」 


嗚咽交じりで、の支離滅裂な叫びが止まらない。

 

「今日から自分が変われるかも知れないと思ったのに!もう、死んだみたいに生きなくてもいいって思ったのに!ねえ、教えてよ!」

「分かったよ!子供が生まれて…仕事で遅くなる日が続いて、その日も遅くなって、会社から帰って来たら、その、奥さんが子供の顔に、枕押し付けてたんだよ」

「ひどいね」

「いや、俺が悪かったんだろうけど…」

「そりゃ、そうでしょ」

「お前に何が分かるんだよ」

「あんたに、何が分かるのよ。分かんないから、奥さんの頭がおかしくなったんでしょ…ほら、出た、その目。その目で見られると、自分がゴミになった気がすんだけど!」

「そんな目、してないよ」

「したっしょ!前に会ったときもしたんだよ!」

 

そう言って、物を投げつけ、部屋の窓ガラスを割る聡。

 

興奮が収まらない聡は、白岩を部屋から追い出そうとする。

 

「俺は、普通に生きてきたんだよ!今までずっと。お前らが勝手におかしくなっただよ!殴ってもないし、家にもちゃんと帰っただろ。これ以上、何やりゃよかったんだよ。俺がどれだけ我慢してたのか知ってんのかよ!何も知らないのに、言いたいことだけ言ってんな!」


「あんたとなんか、会わなきゃよかった。お店にも来ないで。来たら、帰っから」

 

これが、二人の男と女の運命的な出会いと、別れの顚末の一端だった。

 

【惚れ込んだ男に対する女の激発的感情が、早くも炸裂する。女にとって、離婚したのに指輪を手放せない男の、元妻に対する執着心が許せないのだ。だから、「子供の顔に、枕押し付けてたんだ」という男の物言いの欺瞞性が透けて見えてしまう。それは、男の「結婚観」の甘さへの怒りでもある。離婚の相関性に垣間見える男の、その「結婚観」の甘さへの怒りの根柢に通底するのは、なお指輪を手放せない男に張り付く、元妻への「愛着心」という感情的決めつけであると思われる。「分かんないから、奥さんの頭がおかしくなった」とまで言い切った女には、「頭がおかしくなった奥さん」への同化意識と、その「奥さん」への嫉妬感が複合的に共存している。それは同時に、「自分がゴミになった気がする」という、「その目」に惹かれた女の「不全感」の発現でもある。そして、男もまた、女によって裸にされた「分からなさ」に対し、感情を剥(む)き出しにする。だから、収斂点を吹き飛ばされた二人は、一時(いっとき)の「別離」を余儀なくされたのである。かくも、人間の感情は複雑なのだ】

 

 

 

2  何かが壊れ、崩されていく    

 

 

 

訓練校に通う中年の原に呼び出され、若い島と女の子2人と共に、4人で盛り上がる居酒屋に顔を出した白岩。


 
「俺はさ、無理して若者と仲良くなる気はないから。島君はさ、若者らしく楽しいふりして生きればいいよ」

「白岩さん、ガッツリ切れてるね」と島。


「ほんと、すいません」と原。


誘った手前、気にしているのだ。
 

「え?私、悪いの?」と女の子。

「いや、悪くないよ。原さんも悪くない。それに、何にも面白いことも起きてないよ。今、君ら笑ってたよね」

「だから?」と島。

「今のうちに、たくさん笑っていた方がいいよ。すぐに面白いことなんかなくなるからさ。もうすぐだよ、もうすぐ。ただ生きているだけになる。何の楽しいこともなく、ただ、働いて死ぬだけよ。それがお前らの人生だよ」


「あんたのだべ」と島。


「お前のだよ」と白岩。
 


飲み会の空気が一気に沈んでいった。

 

ここまで言い切る白岩の感情には、先日の聡との烈しい言い争いの余燼(よじん)が燻(くすぶ)っている。

 

原の誘いで、払暁(ふつぎょう)まで飲み直す白岩が目を覚ましたのは、「朝ですよ。いつまで寝てるの。起きて」という子供の声によってだった。


原の家に泊まったのである。

 

妻と子供のいる原の家で、朝食をご馳走になる白岩。 


原の子供が、突然、父のシャツを捲(めく)ると、その背中には鮮やかな彫り物が刻まれていた。 


原は極道から足を洗って妻の地元に戻り、真面目に生きようとする中年男だった。

 

その足で、訓練校に通う二人の男。 


訓練校では今、ソフトボール大会に向けて、練習にも熱が入ってきた。

 

動作が鈍く、いつも教官に叱られ、仲間に無視され、時に虐められていた大学中退の森が、ソフトボール大会のレギュラーの選出で、全く眼中に置かれないことでバカにされ、とうとうキレてしまう。

大学中退で職業訓練校に入校するが、仲間に無視され続けている森

 

 道具箱を投げつけ、木材を振り回した挙句、大工工具の鑿(のみ)を手に取り、周囲を震撼させるが、原らに押さえられ、大事には至らなかった。


結局、退校することになるが、一人の若者の号泣が、そこに悲しく捨てられていた。
 


そして、白岩自身にも変化が訪れる。

 

「ごめんなさい」

 

白岩のアパートの前で待っていた、聡の弱々しい声が本人を迎えたのだ。 


白岩の反応も意外なものだった。

 

「俺、会うことにしたんだ。前の奥さんと」

「そうなんだ…」

「久しぶりに奥さんの実家に電話したら、お父さん出たから…」

 

白岩の話を遮る聡。

 

「今日さ、同伴してくんない?」

 

この一言で全て決まってしまう。

 

聡の言動には、こういう決定力があるのだ。

 

まもなく、聡の店で、笑みを交歓し合う二人。 


そこで、鳥のダンスを踊る聡を真剣に見つめる白岩。

 

聡を抱き締めた後、ソフトボール大会に誘う。 


物語の展開が、早くなってきた。

 

函館にやって来た元妻と会う白岩。


 

フェリーの船内で、近況を話し合っている。

 

元妻の明るい表情が際立っていた。

 

娘も4歳になり、元気過ぎるくらいだと言う。

 

「何か、変わったね?」


「そうか」

「前は一緒にいても、私のこと、いらないって思ってたでしょ」

「思ってないよ」

「でも、今、何だろ、普通になった」

「前から普通だよ」

「あたしには、そうじゃなかった」

 

離婚のルーツが垣間見える会話である。

 

フェリーから降りると、元妻は、白岩に結婚指輪を渡した。 


「なんか、捨てられないから。これからも連絡とれない?こはる(娘の名)のこと知らせたいし。写真送るね」

 

この言葉を受け、白岩の感情が込み上げてきて、突然、嗚咽する白岩。 


白岩の中で何かが壊れ、崩されていく。

 

【この心理を分析すれば、 こういうことだろうか。壊れ、崩されていったものは、離婚のルーツにおいて、その内側に生き残されている男の無自覚な意識の総体である。それでも、男は結婚指輪を手放さなかった。これは男にとって、元妻との離婚の経緯を十全に理解する努力を怠ってきたばかりか、その別れ方が唐突だったので、ケジメをつけられない状態への「不全感」を引き摺ってしまっていた。これは、元妻も同様であったと思われる。そして、その元妻から結婚指輪を渡された。彼女なりにケジメをつけたのである。明るい表情の元妻が、娘を立派に育てている状況を感じ取ったこと。これは大きかった。これで、離婚のルーツの不透明感が払拭されたのだ】

 

 

 

3  「普通」という心地よい観念に隠れ込む男」と「壊れた女」の檻が解き放たれ、何かが起こっていく

 

 

 

聡に会うために、彼女がバイトする遊園地を訪ね、妻と会ったことを話す白岩。


 

「知ってる。気になって探しちゃった。見てて思ったの。あたし、他人だなって」


「奥さんとも、とっくに他人だよ」

「違う。二人は家族だよ」

「もう、違うんだよ」

「分かってる。でも、そうなんだよ」

「聡は分かってないよ」

「多分、そうなんだよね。あたしが、ズレちゃってんの。ぶっこわれってっから、あたし」

「フットボール大会、今度の日曜だから。聡のために、ホームラン打つからさ。見に来いよ。皆にも会わせたいし」 


白岩の訪問目的に全く振れず、聡は唯一の関心事に引き寄せ、そこで炸裂するのだ。

 

「この間(あいだ)、ガッツリ泣いてたね。それで、スッキリ、サッパリ?簡単だね」

 

炸裂したのは、そう言った直後だった。

 

「奥さんに謝れ!」 


そう叫ぶや、空中ブランコの子供を置き去りにして、走り去り、聡は檻の中の動物たちを、片っ端から解き放つのだ。 



ハクトウワシを逃がそうとする聡

聡を見る白岩


しかし、ハクトウワシだけは逃げ出さなかった。

 

その聡を捕まえようとする白岩。

 

「あたしのこと、なんも分かってないくせに!」

「お前は、お前なんだよ!」 


もう、制御不能だった。

 

白岩を突き飛ばし、走り去っていく聡。

 

怒鳴り合う男と女が、遊園地の一角で猛り狂っていた。

 

【このエピソードは、本作の核心である。既に、元妻との間に横臥(おうが)していた「不全感」を払拭した男の視界には、自己を愛し、自らも愛する「壊れた女」への情愛だけが映えている。しかし、男に対する女の情愛の深さは、想像の域を超えていた。元妻との会話を視認した女には、「あたし、他人だな」と思い知らされる記憶の残像だけが生き残された。それは、何某かの精神疾患に起因し、「見捨てられ不安」を固着させていると思われる女にとって、激甚な破壊力以外の何ものでもなかった。だから、女の暴走は止まらない。男だけが女の射程圏に入り込んでくるのだ。動物の解放は、「壊れた女」と言い放つ、女自身の自己解放だった。だが、自己解放した向こうに、心地良き未来像が見えない。何も見えない彷徨の果てに待つのは、それでも澱む情感の疼(うず)き。掻き消せない、この疼きが女を駆動させる。射程圏に入り込んだ男に向かって駆動させる。呼吸を繋ぐためには、それ以外の選択肢がない現実。これだけは認知できている。「普通」という、心地よい観念に隠れ込む男の欺瞞性を知悉(ちしつ)するが故に、女はパラレルな視線で捕捉することができる。何も分からなかったに加えた一撃は、「どっちもどっち」という認知を共有することを可能にしたのである。だから、「今」、「ここ」で、立ち止まることができる。男もまた同様に、立ち止まって考えるができるのだ。これが、「普通」という心地よい観念に隠れ込んだ男と、「壊れた女」の時間を揺さぶり、再起動させていくのだろう。一つだけ敢えて書けば、聖なる巨鳥としてのハクトウワシの主体性の強靭さを強調したい意図が分かっていても、「動物の解放」=「檻からの解放」⇒ラストの「オーバー・フェンス」という単純な構図の映像提示の、その使い古された技巧に、正直、辟易した

 

アパートの自室に戻った白岩は、窓際に留まるハクトウワシを凝視する。


 

ハクトウワシとは、檻の中に入れられても、誰によっても制御されない、一羽の独立した聖なる巨鳥なのだ。

 

それは「壊れた女」の理念系の、人間には難易度が高い究極の結晶点である。

 

だから、眺めることしかできない。

 

だから、パフォーマンスで踊ることしかできない。

 

「それでいい」 ―― メリハリの利かない「壊れた女」は、そう感じ取っていただろう。

 

以下、ビターな経験を通過した白岩の到達点である。

 

「俺はさ、普通に働いて、普通に結婚して、子供作って、そういう人間だと思ってたんだけど、全然違ったんだよ。前の奥さんと会って、やっぱり、俺があいつのことをおかしくしたって思った。俺がいなくなって、元気になってたから。俺さ、全然、分かってないんだよね。今も、何にも分かんないんだよ。お前は自分がぶっこわれているって言ってたけど、俺はぶっ壊す方だから、お前よりひどいよな」 




【このモノローグは説明過多である。これまでの、くどいほどの映像提示で充分ではないかと、私は思う】

 

ソフトボール大会が間近に迫り、白岩はビニール傘をバットにして、素振りの練習に余念がない。 


本気なのだ。

 

聡の見ている前で、ホームランを打つ。

 

あれだけの諍(いさか)いがあっても、聡は必ず来る。

 

自分の思いと彼女の思いは融合する。

 

そう、信じているのだ。

 

それは、聡の人間性のコアに近い辺りに、白岩の理解が届いたことの証でもある。

 

ラストシーン。

 

日曜日のソフトボール大会が始まった。 


家族や合コン相手の女性たちが見学に来ているが、聡の姿は見えない。 


いつものように、試合は整備科の優位に進み、建築科の得点はゼロのまま。 


そこに、白岩がバッターボックスに立つ。

 

白岩の視線は遠方に奪われている。

 

その間、2ストライクを取られ、もう、ワンチャンスしかなかった。

 

赤い車が、彼の目に留まった。

 

聡が降りてきて、元気よく手を振っている。 


その瞬間、白岩のバットからホームランが飛び出すという、予定調和のラストシーンに収斂されていく。



―― 
「普通」という心地よい観念に隠れ込む男」と「壊れた女」の檻が解き放たれ、何かが起こっていく。

 

これが、この映画に対する私の見方である。

 

【余稿】 職業訓練校の現況について

 

イメージ画像・職業訓練校


この映画で気になったのは、職業訓練校の実態が、どれほど現況を反映しているのかという一点である。

 

ネットで多くの体験者の報告を検索したが、最も相応しいと思われるサイトがあったので、以下、その文面を引用したい。

 

【職業訓練校の厳しい校則】退校処分にならないために注意すべき点」 ―― これがサイトの副題である。

 

「職業訓練校は、無職の大人が通う学校です。しっかりした大人が通う学校ですが、校則として決まりごとがいくつかありました。

 

公的な機関とあって、かなり厳しいルールが敷いてあります。最悪、退校させられてしまうこともあるので注意が必要です」

 

この説明のあと、「入学式の時に、【校則】と書かれた紙を渡されました。A4用紙5枚程にもなり、かなり細かなルールがありました。

『訓練生たるもの』

訓練生は、職業に必要な知識・技能・技術の習得に努めるとともに、教育施設の規則及び教育訓練指導員の指示事項を守り、他人に決して迷惑をかけないこと」という一文で結ばれていて、授業時間について紹介されていた。(以下の通り) 


「決められた登下校時間を守ること  出席簿の押印は授業開始前に行うこと  遅刻、早退または欠席をしないで訓練に専念すること  やむを得ず遅刻・早退または欠席をする場合は、所定の書類に記入し担当講師まで届け出ること  授業時間に授業以外の学習はしないことなど」   

 

これが校則。

 

更に、こういうルールもある。

 

「気をつけなければいけないのが、出席を8割以上しないと退校処分になってしまう点です。受講科目毎に、出席率が80%以上となっているのでなかなか大変です。科目によっては、2日間しかない授業もあるので絶対に休めません。欠席に関しては、容赦ありませんので、気をつけて下さい!」 

同上

「服装は質素で清潔なものを着用すること  訓練生として、品位ある行動を心がけ、風紀または秩序を乱す行為をしないこと  携帯電話等の使用マナーを守ること。(授業中は携帯電話使用を禁止)  施設内は全面禁煙とする  教室等の環境整備美化に努め、ゴミは各自で持ち帰ること  教室トイレ等の電灯の節電に努めること  暴力行為は、絶対にしないこと  訓練生間の金銭の貸し借り及び物品等の販売は、絶対にしないこと  訓練機器等は、指導員の指示により取り扱い、許可なしで施設外に持ち出さないこと」

 

以下、授業時間外についての校則について。

 

「クラスでの飲み会等の集まりは禁止とする  訓練中、訓練終了後、講師との個人的な連絡はお断りします  職業安定所長の受講指示による訓練生は、教育施設担当の指示する日時等を厳守し雇用保険関係書類を提出すること  教育訓練機関の施設、設備、物品等を故意または重大な過失により破損又は紛失した時はその損害を弁償すること」

 

以下、「退校処分にならないために注意すべき点」。

 

「教育施設の秩序を乱し、訓練生としての本分を失した時  故意に施設、設備等を破損したり物品を紛失又は許可なく施設外に持ち出した時  出席時間が学科及び実技の訓練時間のそれぞれ8割に満たなくなると確定した時  修了認定試験に不合格になった時  無断欠勤が3日以上継続し、訓練施設担当者の指示する事項等に回答せず、欠席が継続した場合  その他訓練生として不適切と認められる場合」 

同上

サイトの最後には、こう書かれている。

 

「職業訓練校の校則は、想像以上に厳しいです。税金でまかなわれている学校とあって、決められたルールを守らないと、退校処分にさせられてしまいます。遊び半分で、職業訓練校を利用するつもりなら辞めておいた方が良いでしょう」

 

―― 以上だが、授業の進め方も速いので、現代の職業訓練校が遊び半分では通校できないことがよく分かる内容だった。

 

これを映画で描かれた実態と、どれほど落差感があるか否か、それは体験者ではなければ分からないということだろうか。

イメージ画像・職業訓練校
 

イメージ画像・職業訓練校


(2020年)
 

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