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2020年10月22日木曜日

DVの犯罪性を構造的に提示した映画「ジュリアン」 ―― その破壊力の凄惨さ グザヴィエ・ルグラン

DV暴力がピークに達し、恐怖の頂点に捕捉された母ミリアムとジュリアン





1  寄る辺なさ生活拠点を失ったと、男によって奪われた母子の〈生〉の現在性


 

 

 

「両親は離婚して、ママと姉と住んでいます。もうすぐ、姉さんの誕生パーティーです。おじいちゃんの家に住んでます。勉強は一人でちゃんとやっています。友達がいっぱいいて楽しいです。あの男が来るのが怖くて、外で遊べません。おじいちゃんも怒鳴るから最悪です。あの男はママをいじめてばかりいます。ママのことが心配なので、離婚はうれしい。僕がママと姉さんのそばにいないと。僕も姉さんも、あいつが嫌いです。週末の面会を強制しないでください。二度と会いたくありません」 


これは、離婚後の親権を巡る家裁で読み上げられた、11歳の息子ジュリアンの陳述書である。 



読み上げたのは家裁の判事

 

この嫌悪感に満ちた陳述書を聞いているのは、ジュリアンの父アントワーヌ・ベッソン。 



以下、親権を巡る家裁での、長い離婚調停の弁論の内実。

 

「子供2人の親権ですが、18歳のジョセフィーヌは対象外。しかし、ジュリアンは、まだ子供。それで希望を聞いたのです。夫側の要求には同意できません。ベッソン氏は、共同親権を求めており、近隣に引っ越して来ました。ですが、子供たちは明らかに会いたがっていません。ジュリアンは父親に対し、厳しい表現を使って拒絶しています。子供たちが不安を感じる理由を示すものとして、父親の暴力による長女のケガの診断書を添付しました。従って、子供たちが母親と暮らせるように求めます。ジュリアンが父親と会うかどうかは、彼の意志に任せるよう、取り決めを希望します。彼女は離婚訴訟を取り下げ、精神的負担のかかる調停を選びました。理由は夫に脅されたからです。電話をしたり、実家に押し掛けたりしたのです」


 

ミリアム側の弁護士の陳述である。

 

「証拠はありますか?」と判事

「彼女の両親の証言があります」

「脅迫の証拠です」

「いいえ。番号を頻繁に変えたため、録音が残っていないのです。条件の話に戻りますが、妻側は慰謝料は要求しません…貯金もなく、ゼロからの再出発になります…新居を探すための費用も早急に必要なので、共同財産の5000ユーロ分を前金として頂きたい。夫に対し、支払い命令を出すことを要請します」 


今度はアントワーヌの弁護士。

 

「確かにジュリアンは、父を悪く言っています。でも、子供の教育は両親2人の責任です。ベッソン氏は近くに移住し、共同親権を求めただけ。脅迫や娘への暴力で非難されるとは心外です…彼の両親も孫と会えなくなり、被害者と言えるでしょう。また、同僚は彼はリーダーで、穏やかな人物を評価しています…“心が広く自然を愛し、飲酒もしない”とのことです。いたって普通の人間であり、先ほど話に出た人物像とは、全く違います。脅迫の証拠があるなら、警察に訴えて捜査すべきです…控えめに言っても、父と子の絆を断ち切ったのは夫人です。それ以来、彼は子供と話すことさえできません。実家の電話番号も分からない。確かにベッソン氏は、夫人の実家に押しかけ、車中で夜を明かしました。でも子供に会いたいが故にやったことです…(略)ベッソン夫人は、子供の権利を奪ったのです…ですから、要求は変わりません。2週に1度、土曜の昼から日曜午後6時までの面会です。彼は近くに住んでいるので、親権は共同とし、隔週末と休暇に会わせて欲しい。彼女の住所も必要です」


「ジョセフィーヌの診断書ですが、何があったのですか?」と判事


「ボーイフレンドのサミュエルと…娘が帰宅するのを待ち、殴ったんです…帰宅するとケガをしていて、翌日、娘が学校でそのことを相談したんです」とミリアム。


「娘は体育でケガをしたんです。他に何を言えと?」とアントワーヌ。


「どちらかが、ウソということですね…子供たちの訴えを、どう証明します?」と判事

「なぜか分かりません。何か吹き込まれたのかも」とアントワーヌ。

「お子さんは、あなたの味方のようです」と判事


「息子は自分から、陳述書を書くと言ったんです」とミリアム。


「父親を奪うのは、息子のためにならない」とアントワーヌ。

 

以上、あとは家裁の裁定を待つだけだった。

 

この親権問題に直接関わりのないジョセフィーヌは、今、恋人のサミュエルとの恋愛しか関心がなく、彼と会うために学校を休むことで、ミリアムに小言を言われる始末。 

ジョゼフィーヌ

恋人のサミュエル


ミリアムは家族と新居の見学中に、裁判所で共同親権を認める裁定の知らせを受ける。

 

早速、週末にアントワーヌが車でジュリアンを迎えに来た。

 

父に会いたくないジュリアンの気持ちを汲み取り、腹痛を理由にミリアムが携帯で断るが、「それなら訴える」という一点張りのアントワーヌ。

 

当然の如く、ミリアム自身もジュリアンを会わせたくない。

 

そのやり取りを聞いて、やむなく車に乗り込み助手席に座るジュリアンは、露骨に嫌な顔をしている。

 

アントワーヌの実家に着くと、両親が待ち構えて歓待する。 


「パパ、週末を交換しようよ。僕も姉さんのパーティーに出たいし」 


ジュリアンの提案に何も答えず、無視するアントワーヌ。 


アントワーヌはジュリアンのバッグを勝手に開け、学校の連絡ノートに父親の欄が修正液で消されているのを目視する。 

ジュリアンのバッグを勝手に開けるアントワーヌ


翌朝、家に送る車の中で、アントワーヌがジュリアンを追求する。

 

「俺は、あの男か?パーティーに行きたいか?なぜママは、お前に言わせて、自分で頼まない?普通は親同士で話し合うもんだ」 


「ママは携帯ない」と嘘を言って誤魔化すジュリアンだったが、アントワーヌは高圧的に連絡ノートを出させ、ミリアムの携帯に電話をかける。

 

ミリアムと話し合うために、家の前に車を止めて待つが、置き忘れたカバンを取りに戻ったジュリアンはママは居ないと言う。

 

「ママは普通じゃない」

「出かけたって。カバンを返して」

「パーティーに行けないのはママのせいだ」 


そう言うや、カバンをジュリアンに投げつけ、車で走り去る。

 

再び週末がやって来て、アントワーヌは明るい調子でジュリアンを迎え

 

パーティーに行けることを匂わせながら、ミリアムとの会話を持ちかけるが、ジュリアンは、ママは留守だと頑なに拒絶する。

 

「クソッタレ!」 


助手席に座り、思わず吐き捨てるジュリアンだが、アントワーヌは何も反応せず、車を出す。

 

実家に着き、食事をしながらも、ジュリアンたちの行動をアントワーヌが監視していることが露わになる。

 

新居の場所を探ろうとしているのだ。

 

その行き先を執拗にジュリアンに問い質すアントワーヌに対し、祖父の制止を無視したことで、父子は激しい言い争いを始めてしまう。 

アントワーヌに怒る実家の祖父


「子供たちお前に会いたがらないのも当然だ!二度と家に足を踏み入れるな!」 


ジュリアンの手を引き、実家から足早にで行くアントワーヌを、彼の父は罵倒する。 


怯(おび)えるジュリアン。

 

「俺を怒らすと、どうなると?ママが間違ってるんだ。コケにするなら、痛い目に遭わせてやる!俺は、お前たちの家を知る権利がある!」 


引っ越し先を教えようとしないジュリアンに、シートを叩きながら恫喝し、ジュリアンは泣きながら、その場所を教えざるを得なくなった。 


ジュリアンの誘導で車を新居に止めたところで、鍵を暴力的に奪ったアントワーヌは、その建物に近づくが、そこでジュリアンは逃げ出した。 


ジュリアンは嘘をついたのだ。

 

少し走って、ジュリアンは父親の様子を見に戻ると、鍵をかざして、家まで送ると言うアントワーヌの車に再び乗り、鍵を返すように訴える少年。

 

それに答えないアントワーヌは、レティシアがジュリアンたちを見たという場所に車を止めた。

 

「ママを殴らないで」

「探し出す」 


結局、ジュリアンはアントワーヌから首根っこに手を回され、観念して新居のアパートに連れていき、エレベーターに乗り込んだ。 


鍵を返されたジュリアンは、アントワーヌを伴って家に入っていく。

 

「何の用?」

「子供の部屋を見に来た」

 

怯えるミリアムに対して、アントワーヌは、突然、キッチンで嗚咽する。

 

「俺は変わった」 

号泣するアントワーヌ


そう訴え、ミリアムを抱き締め、号泣するのだ。 

嫌がるミリアムを強引に抱き締めるアントワーヌ


「もう行かないと」

「明日、迎えに来る」

「いいわ」

 

実家に戻ると、父親がアントワーヌの荷物を、塀の外に積み上げていた。 

アントワーヌを実家から追い出す祖父


寄る辺なさ生活拠点を失った男は、完全に行き場を断たれてしまったのである。 


 

 

2  完全に行き場を断たれてしまった男の自業自得

 

 

 

華やかなジョセフィーヌの誕生日パーティーに、行き場を失ったアントワーヌは、娘に誕生日プレゼントを渡しに来た。

誕生日パーティーで歌うジョゼフィーヌ

その事実を知ったミリアムは、外で待っているアントワーヌのところに向かう。

 

そこで、激しい諍(いさか)いとなる。

 

「俺は何だ?睨むのか?俺から逃げ出して、連絡も取れない。何だと思ってる?」

「また、同じ言い合いはしたくない」


「2人の子供もいるんだ。君がいなくなって辛かった」

「あなたは病気よ」

「よく言うな。病気なのはお前だ!」 


そこで、妹の友人とされる男が現れ、ミリアムに声をかける。

 

アントワーヌは、その様子を見ただけで嫉妬し、ミリアムの首を絞めるのだ。 


「あいつは誰なんだ?ヤツとはもう寝たのか?言えよ!」

 

そこに妹が来て、アントワーヌを激しく罵倒して追い払う。

 

パーティーが終わると、ジョセフィーヌは手紙と鍵を置き、恋人と共に去って行った。 

ジョゼフィーヌとサミュエル

家出である。

 

これで、暴力的な父親との関係を途絶できるのだ。

 

親権から免れたジョセフィーヌには、この選択肢しかなかったのだろう。

 

その夜、眠りについたミリアムの玄関のベルが執拗に鳴らされ、ジュリアンも覚醒し、起きてきた。

 

二人は無視してベッドに入るが、いつまでも呼び鈴は止まない。


しばらくすると、呼び鈴が鳴り止んだので、諦めて帰ったように思われたが、エレベーターの機械音がするや、今度はミリアムの名を叫びながら、アントワーヌは玄関を激しく蹴飛ばし始めた。



【ここでのアントワーヌの一時的な不在は、彼が銃を取りに戻った行動と思われる】

 

ここで、危険を感じた向かいの住人が警察に通報する。 


ドアを必死で抑えていると、突然、銃弾がぶち込まれ、ミリアムとジュリアンは、恐怖のあまりパニックに陥る。 


警察に通報し、その指示に従い、施錠した部屋に続く浴室に身を隠す二人。 


アントワーヌは玄関を突き破り、家に侵入してミリアムを探し続けた挙句、遂に部屋の前までやって来た。 


浴室の二人の恐怖はピークに達する。 


そこに警察がやって来て、アントワーヌは取り押さえられ、全てが終ったのである。 


ラストカット


このラストシークエンスの描写は、観る者のミラーニューロン(共感力)を刺激して圧巻だった。

 

 

 

3  DVの犯罪性を構造的に提示した映画「ジュリアン」 ―― その破壊力の凄惨さ

 

 

 

冒頭の調停で出された裁定は、「離婚後単独親権」を採用する日本の民法では不可能な「離婚後共同親権」のことで、Wikipediaによると、「両親の意見がまとまるとは限らず、むしろ離婚による感情的な対立のため、お互いに自分の意見を譲らず合意に達しない可能性が高い。さらに、離婚時の対立のため、会うこと、話すことさえ困難なケースも考えられる」などというデメリットが指摘されている。 


映画では、「離婚後共同親権」のデメリットが集中的に描かれていた。


 「日常生活の中に潜む恐怖といったものをリアルに描きたかった」(グザヴィエ・ルグラン監督インタビュー)

 

このグザヴィエ・ルグラン監督の狙い通り、DV加害者・アントワーヌが犯した行動総体は、典型的な「DVサイクル」をトレースするものだった。

 

「DVサイクル」とは、「緊張」⇒「暴力」⇒「ハネムーン」という循環性を持つので、DVの連鎖に終わりがこないのだ。

DVサイクル

 

「離婚後共同親権」を盾に、「ミリアムに会わせろ」という恫喝を繰り返すことで、妻子の「緊張」を自己膨張させ、それを拒むジュリアンの学校連絡ノートを強引に奪い、置き忘れたカバンを取りに戻ったジュリアンに、そのカバンを投げつけるという「暴力性」を剥(む)き出しにする。

 

「俺を怒らすと、どうなると?ママが間違ってるんだ。コケにするなら、痛い目に遭わせてやる!俺は、お前たちの家を知る権利がある!」 

ミリアムの居場所を教えず、逃げたジュリアンを追走するアントワーヌ

恫喝された挙句、アントワーヌから首根っこを捕まれ、恐怖のあまり、ミリアムの居場所に連れていかれるジュリアン



アントワーヌのこの言辞もまた、DV加害者に共通している「暴力期」の破壊性そのものだった。

 

そして、「俺は変わった」と言って、ミリアムを抱き締め、号泣する男の行動こそ、「DVサイクル」の「ハネムーン」の雛形(ひながた)通りの動態である。 

号泣するアントワーヌ・演技ではないが、この「ハネムーン」の行程も、思い通りにいかず、その「暴力性」は忽ちのうちに自己膨張していく


因みに、ジョゼフィーヌへのプレゼントも、この行程の一つと言え

 

然るに、この行程で軟着しないのは、DVという、歴(れっき)とした犯罪の恐るべき現実である

 

かくて、アントワーヌの「DVサイクル」は循環し、一気に、「緊張」⇒「暴力」の破壊的炸裂にまで膨張していくのだ。 

銃で部屋に入り込もうとしている男


思考・判断・理性の中枢である前頭葉の機能を抑え込み、情動反応の中枢である扁桃体を暴走させた男自己統制能力、且つ、コミュニケーション能力の致命的な欠如。

情動反応の中枢である扁桃体

 

簡単に言えば、これが、男の「DVサイクル」を止められなかった行動様態の生物学的な集約点である。

 

マグマの如き、自分の思うようにならない不快な現実を、親権を行使できない状況に追い込んだ、元妻子の責任放棄の由々しき問題に帰結させることで、男の爆轟(ばくごう)が決定づけられた。

 

ここで考えてみるに、「DVサイクル」が、かてて加えて、元妻子を追い詰めていく。

 

今や、元妻子の感情は希薄化し、〈明日の生〉に向かう能力を削り取られてしまう危機にあった。

 

この現象は、児童期にあるジュリアンが受けた事態に象徴されるが、ストレスホルモンが過剰に放出されることによって起こる、脳に深刻なダメージを与える危機以外ではなかったのだ。 


被害者はもう、逃げられなくなった。

 

男の破壊的炸裂に被弾した元妻子の恐怖感は、弾丸を打ち込む男が最近接する事態の突沸(とっぷつ)によって、ピークアウトに達する。 


ここで、事態の本質的な意味を確認したい。

 

男の目的は、元妻子に暴力を振るうことではない

 

元妻子を支配することにある。

 

だから、被害者にとって深刻な問題は、身体の傷などではなく、何にも増して「心の傷」だということである


「主人公である父親のアントワーヌは、あらゆることを操ろうとし、欲しいものを手に入れようとします。最初は週末ごとに子供と会いたいという要求、それから子供達と話したい、だんだんエスカレートしてパーティでプレゼントを渡したい…。普通に考えたら父親だから普通のことなので、誰もこれを止めることは出来ないし、通報することは出来ないんです。通報したとしても、証拠がなければ警察は動いてくれないという難しい面があるんです」 

映画では警察が動き、的確な指示を送る・ミリアムの携帯に指示する警察

これも、グザヴィエ・ルグラン監督のインタビューでの言葉。

 

確信的に近接するDV男の、その精神の焼け野原の風景の爛れ具合が、そこに垣間見えるのである。

 

―― 本稿の最後に、DVや性暴力等に関わる重要な問題に言及したい。(人生論的映画評論・続「さよなら渓谷」から引用)

さよなら渓谷」より

社会心理学の概念である「公正世界信念」についてである。

 

「世界は公正にできており、努力した者は報われ、努力しない者は報われない」

 

簡単に言うと、このフレーズに収斂される倫理観で、モラル重視の日本人に根強い観念である。

 

然るに、この「公正世界信念」が過剰になると、しばしば、被害者・被災者に対する取るに足らない「落ち度」を見つけ出し、その態度を批判してしまうのである。

 

「被害者・被災者にも何らかの責任があるのでないか」 

公正世界信念

「公正世界信念」を過剰に信じ、それを他者に押し付ける傾向を持つ、ごく一部の者は、こんな風に決めつけてしまうのだ。

 

被害者・被災者の一面だけを見て、「ヒューリスティクス」な判断が過剰に先行する僅かな情報のみで、「努力しない者」への道徳的ジャッジメントを被せてしまうのである。

 

この「公正世界信念は、本作でDVに被弾した妻子に適用すれば、「離婚後共同親権」の行使を拒絶するミリアムに問題があるという論法に振れてしまいかねないから、蓋(けだ)し厄介なのだ。 

 

この「信念」(仮説)の行き着く先が、「人はなぜ被害者を責めるのか?」という危うさを内包するが故に、アントワーヌの犯罪性を希釈化してしまうのである。 


―― 以下、作り手自身の言葉を借りて、本稿を閉じたい。

 

「一見、子供の視点からとられているようにも思えるのですが、実際の構成は、メインはアントワーヌで、夫の行動をフォローしているんです。このアントワーヌという人物は自分の周りの者たちを操ることによって、自分の欲しいものを手に入れています。まずは判事を操り、それから子供を操る、そして最後は妻を手に入れようとする、と言う風に。アントワーヌを巡ってのいろんな動きをフォローしていくわけなんです」(グザヴィエ・ルグラン監督インタビュー) 

判事を操る態度を見せる男・アントワーヌ


「関係の壊れた元夫婦であるアントワーヌとミリアムのあいだで、二人の子どもであるジュリアンにはとても大きなプレッシャーがかけられています。その上、彼には人質のような役割も与えられる。父親であるアントワーヌは、夫婦のつながりが壊れてしまった後でも依然として妻との関係を保ちたいと考えている。そのために、父親としての権力、そして男としての権力を利用しようとするのです。人質として利用されるジュリアンが直面するのは、こうしたジレンマです」 

グザヴィエ・ルグラン監督


DVの犯罪性を構造的に提示した映画「ジュリアン」 ―― その破壊力の凄惨さ。

 

これに加える何ものもない。

 

(2020年10月)

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